とんかつQ&A「おいしいバイト」

Q.


人生経験豊富で名を馳せているロースおじさんにご相談があります。今自分は会社をリストラされて結構暇な毎日を送っております。その会社ではそこそこの給料を貰っていて生活には大して困っておりません。そこで質問なのですが金額的においしいのではなく、女性関係的においしいアルバイトを現在探しております。結構メジャーどころのハンバーガー屋などの接客業は得意ではございません。何かおじさんがご存知のおいしいバイトなどはございませんか?



お名前:特攻野郎エッチチームさん

A


▼9月1日
青い海と、高い空の間に、おじさんはただ1人寄る辺なく漂う。おじさんが太平洋の真ん中に放り出されてからすでに8日間が経過した。廃品回収車の荷台に小学校の跳び箱を発見したおじさんは、「今なら世界初、跳び箱をヨットにしての太平洋単独横断航海が実現できるはずや!」と喜び勇んで跳び箱にまたがり大海へと漕ぎだしたものの、1日も経たんうちに8段目が沈み、見る見るうちに7段目、6段目、5段目、4段目……おじさんの愛する船は下から順に海の藻屑となって消えていった。残るのは今や、おじさんがしがみついている1段目を残すのみや。

周りには広大な水たまり以外、何も見えへん。時おり遠くを横切る船影に向かって、手に持った体操着袋をちぎれんばかりに振り回して、おじさんの存在を知らせようと試みるんやけど、気づいてくれる船は一隻もおらんかった。今はポケットに入っとったちびた鉛筆を舐めながら、唯一の持ち物である体操着にこの手記を書きつけとる。もしおじさんが死んでも、体操着だけはどこかに流れ着いてくれるはずや。
 
 
 
▼9月2日
焼けつくような喉の渇きと暑さで目が覚める。3日目に降ったスコールの雨水以来、もう何日も何も口にしていない。時々手の届きそうな距離を飛んで行く海鳥を捕まえようと手を広げてみるものの、弱ったおじさんの瞬発力では鳥さんの体に触れることすらできんかった。太平洋を横断しようというのに、なんでおじさんは体操着袋しか持ってこなかったんやろう? 水と食料を持っていくなんて発想は全くなかった。そんなこと出発前に思いつける人なんて普通いる? やはり太平洋横断には、人並み外れた高い知能が要求されるようや。後悔の思いで、乾いた口にブルマーを含む。甘じょっぱい海藻のような味がした。
 
 
 
▼9月3日
体操着袋の紐を外し、先っちょに洋服についていた安全ピンを結んで魚釣りを試みる。餌は粘度抜群、練りエサのようなおじさんの鼻くそや。2時間ほど紐を垂らしてみたが、何の変化もなかった。突如怒りで目の前が真っ赤になり、意味不明の言葉をわめきながら海面を無茶苦茶に叩きまくった。消耗するだけで、何も得るものはない。海に浮かんでいた水草のクズのようなものを拾って食べた。苦い。
 
 
 
▼9月4日
遥か上空を飛行機が横切ったが、ぽつりと海に浮かぶおじさんの姿は向こうからは見えんやろう。無限に広がる水面の上に、おじさんと跳び箱だけがただ浮かんでいる。その圧倒的な孤独。朦朧とする意識の中で、女性関係的においしいバイトのことを考える。募集人数が多いほど可愛い子と出会えるチャンスは多いので、職種に寄らずオープニングスタッフが吉。
 
 
 
▼9月5日
無意識に跳び箱の角をガリガリとかじっていた。何の味もせんかったけど、おたふくソースがあれば割といけなくもない感じや。おたふくソース……おたふくソース……刻みキャベツと紅しょうがのたっぷり入った豚玉をソースべとべとにして食べたい……ああ、腹が減った。
 
 
 
▼9月6日
こどもさんたちのたくさんのったごむぼーと ちかづいてきて「おいで」といった のりうつろうとして まぼろしときづいた
 
 
 
▼9月7日
ジリジリとお日さんに焼かれ続けるおじさんの太ももが、さっきからローストポークに見えて仕方ない。かじりついたら肉汁溢れるローストポーク。体の衰弱はげしく、食べ物を手に入れられるアテもない。今、この場所にあるのは跳び箱、体操着、そしておじさん、おじさんの……。


やるしかない。


体操着で太ももの上をかたく縛って止血すれば、失血死はまぬがれるはずや。それが生きるために必要な行為なら、おじさんにためらいはない。生きるためにやるしかなかったから、やった。誰もおじさんを責めることなどできんはずや。痛みをこらえるためにブルマーを口にくわえ、力を込めて噛みしめる。ジュワッ。……ん? ジュワッジュワジュワジュワッ。おお……なんということや。ブルマーを噛みしめるたびに、おじさんの口の中にえもいえん旨味が広がっていく。
 
 
ジュワッジュワジュワジュワジュワックッチャクッチャクッチャニッチャニッチャニッチャニッチャハムハムハムハムクチュクチュクチュパリックチャクチャクチャクチャヌチュヌチュチュパッ ヌチヌチヌチヌチ チュルルッ ゴクンッ
 
 
細胞のひとつひとつが蘇っていくのがわかる。海の栄養分がたっぷり染み込んだブルマーを食べた瞬間、おじさんの体にはっきりと活力がみなぎってきた。このパワー……今なら手漕ぎでハワイぐらいには辿り着けるはずや。おじさんは跳び箱を体の下に抱えたまま、猛然とスクリューのように手足を動かし始めた。いける…! いけるで…! 待っててや! ラニカイビーチ! マハロ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
 
 
 
 
 
 
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ロースおじさんのとんかつQ&A

「〜その悩み、豚に相談した?〜」







 
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