ロースおじさんの日記 - 52







▼2015年10月23日

世の中には自分と他者のふたつしか存在しないわけやから、おじさんは自分の気持ちと同じくらい、他者の気持ちも尊重したいと思うとる。自分と他者の境界を決して曖昧にしない、踏みつけない、深入りしない。だから初めて行く小学校の靴箱を前にした時も、いきなり上履きさんを鷲掴みにして、その芳醇な薫りをゼッゼッゼッとせわしなく吸引したり、そんな野蛮な真似は絶対しないんよね。
  
 
上履きさんは、おじさんという「黒船」を目の当たりにし、さぞプルプルと怯えとることやろう。「一体何が始まるんです?」と戦々恐々、初めて目の当たりにする「外圧」に気持ちと体がバラバラになるのが自然な反応や。だからおじさんは、まず敵意のないことを示すためにニカッと笑ってね。誰もいない深夜の靴箱の前にどかっと腰をおろして、芋焼酎をぐい呑みにトクトク注いで一献おっぱじめるんよ。
 
 
上履きさんサイドからすると「?」って感じよね。急にやって来た豚が目の前で焼酎やり始めたら、誰だってそうやろう。でもこの時点でおじさん、相手の虚を突くことに成功しとるんよね。「ようわからんけど、どうも悪い奴じゃなさそうだ」って感じでね、しばらくすると上履きさんの気持ちが「開いて」くるのが分かるんよ。そうなってから初めて、おじさんは上履きさんの方にゆっくりと歩み寄る。決して急がず、騒がず、焦らず、上履きさんからの「触ってもよい」という「合図」を待つんよ。その合図は、空気で分かる。靴箱全体にビリッとした緊張感を感じる時はまだダメや。合図が出た時は、空間全体が柔らかくなって、そうやね、「15時半ぐらいに行く銭湯の脱衣場」ぐらいの雰囲気になるんよ。それが上履きさんからのOKサイン。
 
 
そうなったらおじさんは、荒々しく上履きさんの体に掴みかかり、ねじり、噛みつき、しゃぶり、汚し、ねぶり、その深奥に溜め込んだ芳醇な薫りをゼッゼッゼッゼッとせわしなく肺胞に送り込み、絶頂に達する瞬間には白目をぐるんと剥いて、深夜の校舎でこう叫ぶんよ。
 
  
 
 
ポゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー