とんかつQ&A「物を失くした時」

Q.
 

お気に入りのイヤホンを旅行先で失くしてしまいました。6000円くらいしたのに……。今は1500円くらいのイヤホンで我慢してますが悔しいです。ロースおじさん、慰めてください。



お名前:haltaさん





A




わかるよ。気に入ってたモノを失くすのって、地味ながら心のダメージすごいよね。おじさんも小学4年生の子供さんが落とした消しゴムのカスをかき集めて練り練りし、そこに自分の汗とチャツネを揉み込んで研磨した5センチ大のボールを「宝玉(ほうぎょく)」と名づけて愛でていたんやけど、つい先日に失くしてしまったんよ。その日はおじさん、歯ぎしりでギロみたいな音が出た。ただこれだけは言っておきたいんやけど、haltaさんがイヤホンを失くして悲しいのはわかるとしても、そのあとの対処が決定的に「よくない」ね。


何がよくないって、6000円のイヤホン失くした代わりに1500円のイヤホン買ったことよ。たぶん「6000円も損したんだし、もうこれ以上よけいな出費をおさえたい」って心理が働いたんやろうけど、それ、運命に敗北宣言してるのと同じだからね。例えるならば、優勝旗ほどもある白旗を天に掲げるが如き所業や。そんなネガティブな動機で買ったイヤホンは、使うたびに「前のほうがよかった」って気持ちを膨らます材料にしかならないよ。結局、あなたは失ってしまった6000円のイヤホンにまだ執着してしまっているんよ。脳には「所持効果」という現象があって、自分の持ち物を本来の価値以上に評価する傾向があるって知ってる? なんでも鑑定団で借金のカタに渡されたツボに1000万円の予想額をつけるおじいちゃんとか、所持効果がフルスロットルで稼働しとるからね。


人間がどんなときに「損した〜!!!」と感じるかといえば、損失が生んだロスを埋め合わせてるときや。改札の目の前でパスケースを忘れたことに気づいて取りに戻るとき、の頭の中で大嵐が吹き荒れとるやろ? 脳は無益な行いにとっても敏感なんや。こういうときは、パスケースを取りに戻るついでにあえてミニストップに寄り、コーヒー片手に練乳いちごパフェでも食べたらええ。結果的により多くの時間を使うことになるけど、わざわざUターンした行動に"パフェ"という意義が加算されて、後悔の念がかなり軽減されるんよ。だからhaltaさんは思い切って3万円のイヤホンを買うべきやった。そうやって、「イヤホンの紛失」というネガティブな出来事を、「上位機種への買い替え」というポジティブな出来事へと無意識にスライドさせた方がよかった。人生ってもんは、自分の脳との騙し合い化かし合いやで!


あ、そうそう。失くしたと思ってた「宝玉(ほうぎょく)」やけど、後日ちゃんと見つかったよ。どうやらおじさん、酔って宝玉を舌先で「レロレロレロレロレロレロ」って偽花京院みたいに舐めまわしてて、なにかの拍子に誤飲してたらしいんよ。後日、激烈な腹痛に襲われて嘔吐したら無傷の宝玉がコロンと出てきて驚いたよね。千と千尋の神隠しのハク竜みたいやと思わん? 思わんの? あ、そう。