ロースおじさんの5分間ミステリー「消えた教室備品」







★あなたには事件の謎が解けるだろうか?



【問題編】
 
 
「いやいや……勘弁してください、刑事さん」
 
 
 日没とともに始まった取り調べは一時間を超過し、格子戸の向こうには闇が広がるばかりとなった。
 
 
「心当たりなんて、ないんよ。実際」
 
 
 コック帽を被った豚は何度もそう繰り返し、薄笑いを浮かべる。消耗しているのは刑事のほうだった。いままで相対してきた犯罪者と比べてもこの豚は特にとらえどころがない。搦め手で証言を得ようとしても、すぐに察知されてかわされる。
 
 
「しかしだな。確かに小学校の教室から備品が多数盗まれているという報告が入っているんだ。」
 
「盗まれた備品ってなんやったっけ?」
 
 
 わかりきったことを問い返す。そうやって、話を振り出しに戻す腹づもりだ。
 
 
「四年生の教室から黒板消し、チョーク一式、大きい三角定規、絵の具セット、色鉛筆セット……その他もろもろ。目撃証言だってある。盗んだのはお前以外に考えられない」
 
「それって情況証拠やんね? 悲しいわぁ。おじさん、決めつけられて悲しいわぁ。あれかなぁ、日頃の行いが悪かったんかなぁ」
 
「お前、ふざけ……」
 
 
 上がりかけた右腕を理性で抑える。挑発に乗れば豚の思う壺だ。
 決定的な証拠はない。盗まれた備品も見つからない。このままでは釈放もやむを得ない。
 
 
「ふぅ、何度も同じことをしゃべりすぎておじさんちょっと疲れてきたわ。食事休憩にせん? 一度やってみたかったんよ。取調室でカツ丼を食べるシチュエーション」
 
「あれはドラマだけだ。カツ丼なんて絶対に認めん。ここで飲んでいいのは水だけだ。だいいち、お前は豚だろうが」
 
 
 豚は投げ渡されたペットボトルの水を一気に半分ほど飲み干す。そして気持ちよさそうにゲップを放った。
 
 
「ふぅ。空きっ腹に冷や水や。釈放されたら腹いっぱい食わんとやってられんね」
 
 
 再びゲップを漏らす豚を見ながら、刑事は言った。
 
 
「いや、残念ながら釈放は無理だ。しばらく刑務所で過ごしてもらうぞ」
 
 
 



(Q.刑事はなぜロースおじさんが犯人だと気付いたのでしょう?)

 
 

 
 
【解決編】
 
 

刑事はロースおじさんが飲んだペットボトルの水を見たとき異変に気がついた。水が不自然に白く濁っていたのだ。
 
 
それが水と石灰が反応して溶け残ったCaCO3(炭酸カルシウム)であると気付いた刑事は、盗んだ備品のチョークをロースおじさんが食べていたことを直感したのである。
 
 
しかし、おじさんの即時逮捕は叶わなかった。
 
 
取り押さえようとする直前、ロースおじさんが悶絶して取調室の床に倒れたのだ。
 

開腹手術の結果、おじさんの胃袋内からチョーク、黒板消しの欠片、三角定規の欠片、絵の具、色鉛筆の破片などが一体となった30cmほどの物体が摘出された。ロースおじさんは重度の消化器官損傷により、現在も入院中である。
 
 
 












ロースおじさん公式グッズSUZURIで販売中!