とんかつQ&A「白虎野の娘」

Q.
 

ロースおじさんこんにちは。私はバンドを組んでいるのですがいまいち人気がありません。売れるためにはどんな戦略で攻めればいいでしょうか?教えて〜!!



お名前:S菌さん





A




平沢進っちゅうミュージシャン知ってる? 元P-MODELってバンドやってた人。だいぶ前にTwitterで「私は(『けいおん!』の)平沢唯じゃない」ってツイートして話題になってた人ね。あの人の姿勢は参考になるかもしれん。おじさんはアニメ『ベルセルク』の劇中歌からハマったにわかファンやけど、平沢進ほど独自の道を突き進み、なおかつ高い人気も集め続けているアーティストは他にいないと思うわ。ちょっとこの場を借りて語らせてもらうね。なぜならここはロースおじさんの自由帳だから。
 
 

 
 
これが平沢進がP-MODELからソロに転身して2発目の曲、『世界タービン』や。スゴくない? もう26年前の曲だけど、今なお色褪せないナニコレ感にガツンとやられるよね。平沢進の世界観の特徴は、とにかく「わからない」ことなんよ。歌詞には難解な科学用語・SF用語・哲学用語・外国語や造語が散りばめられており、一聴して歌詞を一読したくらいでは何がなんだかさっぱりわからん。でもそこに圧倒的な歌唱力(CD音源とライブ音源の違いがわからないレベル)と演奏力が加わって、「何が何だかわからないけど、とにかくヤッべっぞ!」と感動してしまうんや。
 
大半のJ-POP歌手が実体験に基づいた具体的なできごとを唄ってリスナーの共感を呼んでいるとすれば、平沢進は「世界」「宇宙」「時間」みたいな大スケールから共感をブッ飛ばしてリスナーを包み込むんよ。おじさんが特に好きな曲は「環太平洋偽装網」「DUSToidよ、歩行は快適か」「ハルディン・ホテル」「聖馬蹄形惑星の大詐欺師」「夢の島思念公園」「華の影」とかかな。
 
 

 
 
数年に一度行われている「インタラクティブ・ライブ・ショウ」では、音楽と物語を融合させたパフォーマンスを演っとる。ストーリーは難解で正直よくわからんのやけど、観客に「ヒラサワ〜!」と全力コールさせてから颯爽と登場したり、合間にCGアニメ映像が流れたり、観客の声援でライブの結末が変わるマルチエンディング方式だったりと、頭を空っぽにして楽しめるヒーローショー的な側面もあって楽しいで。
 
 
で、なによりスゴイのは「そんな芸風なのに食えてる」ってコト。我を守った結果、生活を守れなかったミュージシャンがどれだけいることか……。平沢は利権を大手レコード会社やJASRACに管理されることに疑問を持っていて(PVの中でレコード会社にミサイルを撃ち込むシーンがあるほど)、いろいろ揉めた挙句に楽曲の版権を引き上げたんよ。おじさんはレストラン経営しとるからわかるけど、独立ってめっちゃ大変やからね。会社作って、権利関係の業務も全部管理しなきゃいかんわけやし。でも彼は90年代後半にはもう公式ホームページを開設しMP3音源を配信するなどして、ネット時代に先駆け自分だけの販路を開拓することに成功したんよ。
 
 
つまり、平沢進は常にマイナーを行く孤高の男であるとともに、商業音楽の市場へ「平沢進」という商材を輸出できる優れたビジネスマンでもあるんや。難解に見えてポップで、やたら偏屈なのにユーモラスで、観客を突き放すような厳しい態度の中に度外れのサービス精神が垣間見える。矛盾だらけで謎めいているからこそ、ファンは「これをわかりたい」と欲望して彼の虜になるんやろね。
 
 
長々語ったけど、質問者さんも自分がやりたいことを見据えたうえで地道に続けていけば、結果はあとからついてくるんやないかな? いますぐ売れる戦略を探すより「いかに替えの利かない存在になれるか」を考えて実行するしかないと思う。不法侵入と同じで、急かず手抜かず、や!
 
 
 
ハーイヤー!
行け豚よ 柵さえも超え
秘密裏に小児の学び舎へ
奇跡の衣類に 饒舌なサイレンが鳴る
イーーンヤーーー! (※)
 
(※こんな歌はありません)






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